P−3Cの航続性能について           レポート001 哨戒機機長 

 

P-3Cは洋上哨戒機として作られた(元は旅客機ですが・・)飛行機ですので、長距離飛ぶ事が出来て、しかも長時間滞空できることが必要です。従って搭載燃料も多く、満タンにすれば、ドラム缶で174本もの燃料を搭載します。(それでもジャンボに比べれば子供みたいなものですが。)

さて、その燃料を使って効果的に飛ぶ方法には二通りあります。

一つは、車と同じように少ない燃料で長距離飛ぶ方法、つまり燃費を良くする飛び方です。この時は、4つのエンジンを最も効率の良いセッティングで回しながら、燃料が減って軽くなるに従って、少しでも空気抵抗が少なくなるように高度を上げて行きます。ステップアップと呼ばれる飛び方で民間機でも同じです。P-3Cは、プロペラ機ながら第1世代のジェット旅客機と同じ高度で巡航することが出来ます。この方法で東に向かって10時間飛べば、丁度ハワイに到着します。南に向かってまっすぐ飛べば、オーストラリアのダーウィンあたりまで飛べる計算になります。

もう一つの飛び方は、同じ場所に留まって、最も長時間飛ぶ方法です。洋上を行動する潜水艦や、水上艦艇を監視する様な時にこの方法を使います。この時は極端な話をすれば、空中に浮かんでさえいれば良い訳ですから目一杯出力を絞ります。そして、燃料が少なくなって軽くなる毎に、エンジンを一つずつ止めて行きます。これをロイター飛行と呼び、最初は一番外側のどちらかのエンジンを止め(通常は左外側)、更に軽くなれば左右の外側エンジンを両方止めます。極端に軽くなれば計算上は一つだけのエンジンでも飛べないことはないのですが、安全上これは許可されていません。2エンジン・ロイターまでです。

さて、その状態で何時間飛べるかと言うことですが、燃料が0になるまで飛んでいることは出来ませんので、一応予備燃料を一つのエンジンあたり1000リットル程残して着陸する決まりになっています。その決まりを守って、いくつかの航空隊で飛んでみましたが、その結果は誰が飛んでも15時間以上飛行することができました。

 タービン・エンジンというのは、誰が扱っても同じ性能しか出ません。しかし30年以上昔に海上自衛隊で使用したP2V-7というレシプロ哨戒機では、ガソリンと空気の混合比を変えるミクチャー・レバーで絶妙の調整を行ってエンジンが息をつく寸前できわどい運転をすれば、20時間以上飛ぶ事が出来ましたから、滞空性能だけ見れば昔の方が余裕があったなという感じです。

        以上間もなくリタイアするP-3Cしか知らない老パイロットの独り言でした。